【完】ワイルドなトイプードル系男子が可愛すぎます。
千夏ちゃんは、私が使っていたバケツをひょいと持ち上げると、すたすたと立ち去ってしまった。
ぽつんと玄関に取り残された私は、千夏ちゃんの言葉にどこかで卑屈になっている自分に気づいた。
王子様のようになんでも出来ちゃう清良君。
私、自信がなかったんだ……。
「清良君のことを『大蔵商事の息子さん』って見てしまっていたのは自分じゃないか」
立ち上がり千夏ちゃんに駆け寄ると、千夏ちゃんの持っていたバケツを「持つよ」と言って受け取った。
「ありがとう千夏ちゃん。バカって言ってくれて」
「バカって言われてお礼言うの彩音先輩くらいですよ。どんだけ人がいいんだって話ですよ。まあ……そういうところも含めて清良先生は好きになったんでしょうけど」
「早く仲直りしてくださいよ!」千夏ちゃんはそう言って私の肩をぽんと叩いて、職員室へと戻っていった。
仲直りか……。
まあそういうことになるんだろうな。
水道で汚れた雑巾をごしごしと両手で力いっぱい擦りながら、今日の帰りにでもちゃんと話をしようと心に決めた。