【完】ワイルドなトイプードル系男子が可愛すぎます。
江渡館長に事情を説明すると、エプロンの上からコートを羽織りポケットにスマホと財布を素早く入れた。
玄関で長靴を履いていると、清良君が「俺も行く!」と言って隣で長靴を履き始めた。
「千夏先生が、もし美晴ちゃんが逃げたり暴れたりしたら体力がある男手が必要だろうからって」
「うん、助かる!」
「二人とも気を付けてね。何かあったらすぐ電話を。私が職員室で待機していますから」
「はい」
心配そうに私たちを見送る江渡館長にぺこりと軽く頭を下げ、私と清良君は児童館を飛び出した。
朝降り積もった雪は太陽で溶かされていて、道路に透明なシャーベットになって広がっていた。
この辺りの道が分からない清良君は、私の後ろをついてきた。
「清良君」
「なに?」
「頼りにしてるからね」
それは清良君に本当の気持ちが伝えられない不器用な私からの仲直りの言葉だった。
清良君がそれを感じ取ったのかは分からないけれど、「うん」と答えたその声は、とても心強く私の背中を押した。