エースとprincess
もともとの同行予定者が女性だったこともあり、部屋はシングルルームふたつだった。互いのドアのところで明日の起床時間を確認すると、じゃあと言って別れた。
シャワーを浴びるとほかにすることもなかった。荷解きといっても明日の服をハンガーにかけ、洗面と化粧の道具を出すくらいで、すぐに終わってしまった。
部屋着兼パジャマ代わりに持ってきたティーシャツとハーフパンツという格好で、瑛主くんの部屋のドアを叩く。アイスクリームを食べにきたと言うと、細く開けていたドアを大きく引き、室内に入れてくれた。
私にしては珍しく、これは計算だった。コンビニでアイスを買えば、瑛主くんが持ってくれる。そのまま渡すのを忘れて各自の部屋へ。そういえばアイスあったっけ、と思い出したようにもらいに行く、という。
「ラムレーズンだっけ? ヘーゼルナッツだっけ?」
「ヘーゼルナッツのほう。でもラムレーズンも味見くらいしてもいいよ」
「なにその日本語」
はい、と差し出されたカップを受けとり、ベッドの端に座らせてもらう。入り口でアイスだけ手渡される展開も予想していたけれど、そうならなかったところをみると、これは一緒にいていいって意味かなあと。そう解釈して居座らせていただく。
瑛主くんはカウンターテーブルまえの椅子に腰掛けた。テーブルには書類やチケットのような物が置いてあった。仕事の資料整理をしているところだったのかもしれない。それなら部屋を出るときに手伝ったほうがよさそうだ。どこにやったかすぐにわからなくする人だから。
蓋を取っただけでまだ口をつけていないラムレーズンアイスを突き出され、腕を伸ばしてひとさじもらった。代わりに私のヘーゼルナッツを一口あげることにする。私のスプーンですくったひとかけらに瑛主くんはなんの躊躇もなくぱくっと食らいついた。え、と私のほうが戸惑ってしまった。
「えっ、てなに。こういうことじゃないの?」