傷痕~想い出に変わるまで~
どう思ってるのかと言われても。

「5年前に別れた夫。」

「確かにそうだけど…そういうことじゃなくて。」

門倉が苛立たしそうにビールを煽り、タバコに火をつけた。

なんか機嫌悪い?

タバコを吸いながら手元をじっと見つめて、オイルライターの蓋を何度も開け閉めしている。

「あいつに好きだって言われたんだろ?おまえはあいつのこと好きかどうかって聞いてんだよ。」

「…どうだろう?」

「どうだろう?って…自分のことだろ?」

「そうだけど…。」

ずっと想っていた相手ならともかく、光は一度苦い思いをして離婚した相手だ。

簡単に答えが出せるわけがない。

他の人はみんな、誰かに好きだから付き合ってくれとか言われて簡単に答えが出せるものなのかな?

「門倉だったらどうする?」

「俺?」

門倉が不機嫌そうな声で返事をした。

なんでこんなに機嫌悪いの?

「別れた奥さんとか昔の彼女から、やっぱり好きだからよりを戻して欲しいって言われたら…。」

「断る。俺にはもうそんな気持ちはないからな。けど…好きな相手なら付き合う。」

門倉は元嫁と元カノにはもう好きとかそんな感情はないみたいだけど、それとは別に付き合ってもいいと思うような人がいるってこと?

聞いたことないんだけど。

「門倉、好きな人いるの?」

ストレートに尋ねると、門倉は少し目を大きく見開いた後、照れくさそうに目をそらした。

「……いる。」

「ふーん…知らなかった。」

「だろうな。」

< 112 / 244 >

この作品をシェア

pagetop