傷痕~想い出に変わるまで~
午後2時15分。

私の自宅の最寄り駅で光と待ち合わせた。

お昼御飯を一緒にと誘ってくれたのに、時刻はお昼時を大幅に過ぎている。

駅に着くと光は改札前の壁にもたれて待っていた。

「お待たせ。遅くなってごめんね。」

「いや、俺も今来たところ。」

「そうじゃなくて…支度に時間がかかってもうお昼御飯の時間じゃなくなっちゃったから。」

「そんなの気にしなくていいよ。急に誘ったのに瑞希が来てくれただけで俺は嬉しい。」

光って…そんなこと言えるんだ。

言われたこっちの方が照れくさくて、少し頬が熱くなった。

昔も優しかったし好きだって何度も言ってくれたけど…いくらでも待ってるとか会えて嬉しいとか、今になってそんなにストレートに言われると、なんだか恥ずかしい。

赤くなった顔を隠そうと思わずうつむいてしまった私を、光は不思議そうに見ていた。

「どうかした?」

「ううん…なんでもない。」

「じゃあ…どこに行こうか。食べたいものある?」

朝方まで深酒したせいで食欲はまだあまり湧かない。

でも光はずいぶん待たされてお腹を空かせているはずだ。

「私は軽いものでいいんだけど…。光はお腹空いてるよね?」

「俺も朝御飯が遅かったからそんなに言うほどでもないな。じゃあ昼は軽めにしよう。そこのカフェでも入ろうか。」

「あ…うん。」

“昼は”ってなんだ?

昼御飯を一緒に食べるつもりで誘ったんでしょ?

食事が済んだら帰るんじゃないの?

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