傷痕~想い出に変わるまで~
「苦手ってわけでもないけど、確かに昔ほど甘いものは好きじゃなくなったかな。いつもミルク入り砂糖なしのコーヒー飲んでる。」
「そうなんだ。味覚も好みも大人になったのかな。」
「大人にもなるよ。もう32だからね。」
ハッキリ言葉にすると、また胸が軋んだ音をたてた。
どんなことがあっても時間は止まることなく流れていて、私たちは離れてからもそれぞれに歳を重ねた。
お互いに知っているのは若かった頃のことばかりで、まるで知らない大人同士になってしまったみたいだ。
「まだ32だよ、瑞希。」
「え?」
パンケーキを切り分けていた手元から視線を上げると、光が真剣な顔をして私を見つめていた。
「若けりゃいいってわけじゃないし、焦ってもいいことなんてなかったもんな。俺は大人になった今の瑞希をもっと知りたいし、これからの瑞希とまた一緒にいられたらって…思ってる。」
「……。」
光の言葉を聞くと複雑な気持ちになって、素直にうなずくことはできなかった。
やっぱり焦って結婚なんかするんじゃなかったって、光は私との結婚を後悔してるってことなのかな。
確かに私たちはあの頃まだ世間知らずで、人として幼かった。
結果的に失敗はしたけれど、あの時はお互いを大事に想うからこそ二人で結婚を決めたんだと私は思っていたのに。
「ごめん、また余計なこと言って瑞希が食べるの邪魔したみたい。」
黙って手元に視線を落とした時、光のオーダーしたミックスサンドが運ばれてきた。
「そうなんだ。味覚も好みも大人になったのかな。」
「大人にもなるよ。もう32だからね。」
ハッキリ言葉にすると、また胸が軋んだ音をたてた。
どんなことがあっても時間は止まることなく流れていて、私たちは離れてからもそれぞれに歳を重ねた。
お互いに知っているのは若かった頃のことばかりで、まるで知らない大人同士になってしまったみたいだ。
「まだ32だよ、瑞希。」
「え?」
パンケーキを切り分けていた手元から視線を上げると、光が真剣な顔をして私を見つめていた。
「若けりゃいいってわけじゃないし、焦ってもいいことなんてなかったもんな。俺は大人になった今の瑞希をもっと知りたいし、これからの瑞希とまた一緒にいられたらって…思ってる。」
「……。」
光の言葉を聞くと複雑な気持ちになって、素直にうなずくことはできなかった。
やっぱり焦って結婚なんかするんじゃなかったって、光は私との結婚を後悔してるってことなのかな。
確かに私たちはあの頃まだ世間知らずで、人として幼かった。
結果的に失敗はしたけれど、あの時はお互いを大事に想うからこそ二人で結婚を決めたんだと私は思っていたのに。
「ごめん、また余計なこと言って瑞希が食べるの邪魔したみたい。」
黙って手元に視線を落とした時、光のオーダーしたミックスサンドが運ばれてきた。