傷痕~想い出に変わるまで~
「なんだ急に。」

「いや…この後光と会う約束してて…当分動けそうにないって連絡しとかないと心配かけるかも…。」

抱きしめられながらごそごそポケットを探りスマホを出そうとすると、門倉は私の腕を強い力で掴んでそれを止めた。

「門倉…?」

「ホントにあいつが好きか?」

真っ暗な中でも表情が目に浮かぶような真剣な声で尋ねられ、私は自然と正直な気持ちを話そうと思えた。

「好きなのかって聞かれたら正直まだわからないけど…光があんなに想ってくれてるんだから、その気持ちに応えたいとは思ってる。」

「じゃあ…もしあいつ以外にもおまえのことが好きだって男が現れたらどうする?」

なんで急にもしもの話?

離婚してからの5年間、本気で好きだって言ってくれる人なんかいなかったけど。

「私は別にモテないし考えたことないからわからないよ。」

「だったら今考えろ。別の男にあいつよりずっとおまえのことが好きだって言われたら、どっち選ぶんだ?」

急にそんなこと聞かれても。

どちらも私を本気で好きだって言ってくれるなら、そりゃもちろん私が好きな方を選ぶに決まってる。

「私自身が好きな方…?」

「……だからそれがどっちなのかって聞いてんだろ…。」

門倉のボソボソ呟く声が耳元で聞こえた。

「ん?なに?」

「いや…こんな真っ暗な密室で二人きりじゃ俺が変な気起こしてもおかしくねぇな。」

「…え?」

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