傷痕~想い出に変わるまで~
きっと帰ろうとしていたはずなのに、門倉は私と一緒に喫煙室に入ってタバコに火をつけた。

また今朝のことを思い出してしまうから、早く帰って欲しいんだけど。

そういえば昼休みのこと、まだお礼を言っていなかった。

睡眠不足もお昼を食べそびれたのも門倉のせいなのにお礼を言うのもしゃくだけど。

「あの…お昼ご飯とブランケット…ありがとね。」

「ん?ああ、ちゃんと食ったか?」

「昼休みの終わりにおにぎり食べて、3時の休憩にサンドイッチ食べた。」

「そうか。なら良かった。」

門倉はなんともなさそうな顔をして笑っている。

「わざわざ仮眠室からブランケット借りて来てくれたの?」

「 まあな。おまえなんか寒そうだったし蒼白い顔してたから。」

「ありがと、あったかかった。」

やけどしないようにゆっくりコーヒーをすすった。

「ブラック?いつもはミルク入りなのに。」

「眠いから。」

「ホントに大丈夫かよ。報告書仕上がる前に眠っちゃうんじゃないか?」

「そうならないように頑張ってるの。」

門倉と話していると少しは眠気も覚めた。

あと少しだし、睡魔に負ける前になんとかなりそうだ。

「10分だけでも寝れば?少しは効率上がると思うぞ。」

「起きられる自信ない。それこそ朝になるよ。」

「起こしてやるけど?」

それは門倉に寝顔をさらせって、そういうこと?

いくらなんでも恥ずかしすぎる。

「いい、遠慮しとく。あと少しだし。」

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