傷痕~想い出に変わるまで~
まぶたが重くなって閉じそうになるたびに門倉に頭を小突かれたり肩を叩かれたりしながら、報告書が仕上がったのは9時を少し過ぎた頃だった。

「やっと終わった…。」

間違いがないか確認した後、報告書を部長のパソコンに送信してパソコンの電源を落とした。

「お疲れさん。」

門倉は私の頭をポンポンと軽く叩く。

これは門倉の癖みたいなものなのか?

部下にもこういうことしたりするんだろうか。

いや、歳下ならともかくさすがに歳上の部下にはやらないか。

私はしょっちゅうされてるんだけど。

同期なのにまるで子供扱いだ。

帰り支度をしているとお腹が大きな鳴き声をあげた。

よほど大きな音だったらしく、門倉はおかしそうに吹き出した。

「腹減ってんだろ。行くぞ。」

「あ…仮眠室にブランケット返しに行かないと。」

「持ってやる。借りてきたのは俺だしな。」

「…ありがとう。」

なんだかやけに門倉が優しい。

いつもそうだったのか、それとも急にそうなったのか。

そんなことまでわからなくなってしまう。

オフィスを出て仮眠室にブランケットを返しに寄ってから会社を出た。

「さぁ、何食いたい?なんでも好きなもの言え。」

「牛丼でもラーメンでもなんでもいい…とにかく早くてお腹が満たされれば。」

「なんだよ、色気ねぇなぁ。」

色気ないは余計だ。

「眠いもん、早く帰って寝たいの。」

「そうだったな。じゃあ…そこの定食屋にでも行くか。」

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