傷痕~想い出に変わるまで~
嫉妬
食事を済ませて定食屋を出ると門倉が私の手を握り、その手を自分のコートのポケットに突っ込んだ。

あまりに唐突すぎて鼓動が急激に速くなる。

「ちょっ…!門倉…!!」

「いいじゃん、たまには。」

「良くないよ!会社のすぐそばでこんなとこ社内の誰かに見られたら、どんな噂たてられるか…!!」

「俺は構わんけどな。噂通りになればもっといい。」

私がどんなに手を引っ込めようとしても、門倉は離してくれない。

「ねぇ、離してよ。」

「離して欲しいのか?だったら俺の言うこと聞け。」

またからかわれてる…。

仕方なく素直にうなずくと、門倉は意地悪く笑う。

まずいな。

とんでもない命令されたらどうしよう?!

「じゃあ…離してやるから、今日は家まで送らせろ。」

「えぇっ?!それはちょっと…。」

「イヤならこのまま会社のやつらに会うまでずっとこの辺歩き回ってやる。」

「それも困る…!!」

「じゃあ…ここでキスしてやる。」

門倉が無駄にデカイ手で私の頭を掴んだ。

こいつ何考えてんだ!!

「それはもっとダメ!」

「じゃあ素直に送らせろ。」

「わかった!わかったから離して!!」

こうなったら門倉が手を離した瞬間に猛ダッシュで逃げてやる。

「言っとくけど手ぇ離した瞬間に逃げるとかナシだからな。そんなことしたら会社であることないこと言いふらしてやる。」

「にっ、逃げないから!」

完全に読まれてたよ…。

ここは素直に従うしかなさそうだ。


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