傷痕~想い出に変わるまで~
さっき電車の中で見たのは光の夢?!

私、門倉にもたれて光の名前呼んだの?!

いくら眠っていたとは言え、我ながらひど過ぎる。

私だって好きな人に同じことをされたら、ものすごく怒るか落ち込むか、とにかくショックを受けるに違いない。

「あの…全然覚えてないんだけど…ごめん…。」

「めちゃくちゃ傷付いた。絶対許さん。」

「えぇっ…。」

どうしよう…。

どうしていいのかわからず黙り込むと、門倉は私を抱きしめながら耳元で小さく笑った。

「バーカ。」

「…え?」

「ムカつくしショックなのはホントだけどな。おまえにあたってもしょうがねぇし…今回だけは許してやる。」

門倉は笑いながら頭の頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。

良かった…いつもの門倉だ。

「けどその代わり…。」

え、その代わりって何?!

とんでもない無茶な要求をされたらどうしよう…。

「篠宮。」

「ん?」

名前を呼ばれて顔を上げるとクイッと顎を掴まれた。

頭は反対側の手でがっちりホールドされている。

「お詫びにキスさせろ。」

「えっ?!」

「あいつとしてたキスよりめちゃくちゃ濃厚なやつ。」

「えぇっ?!」

光としてたキスよりって何?!

「それ…嫉妬?」

「言ったな…?息できなくなるくらい激しいのしてやる。覚悟しろ。」

門倉の顔がゆっくりと近付いてくる。

逃れようにも身動きも取れず、あともう少しで唇が触れそうになった瞬間、観念してギュッと目を閉じた。

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