傷痕~想い出に変わるまで~
やや間があって、額に柔らかいものが微かに触れた。

ん……?

おそるおそる目を開けると、門倉は笑みを浮かべて私の頭を撫でた。

「また眠れなくなったら困るから今日は勘弁してやる。ゆっくり寝ろよ。」

「う…うん…。」

「眠れなかったら電話しろ。腕枕で添い寝してやる。」

「それは要らないよ、バカ…。」

門倉は笑いながら私に背を向けて手を振った。

「じゃあな、おやすみ。」

「おやすみ…。」

ドアが閉まった途端、急激に体の力が抜けて玄関に座り込んだ。

ホントにめちゃくちゃ濃厚なやつされるのかと思った…。

強引なくせに優しいんだもんな。

また門倉にドキドキさせられた…。

門倉は余裕なのに私ばっかりドキドキさせられて、なんだか悔しい。

でも…そうか、門倉も嫉妬なんかするんだ。

光としてたよりも激しいキスさせろとか…。

「あ…。」

そうだ、私はまだ光に返事をしていない。

光とのことを迷っているうちに門倉からも好きだと言われて、もう何がなんだか…。

目を閉じて腕組みをしてかんがえていると、睡魔がやって来て頭がカクンと落ちそうになる。

ダメだ、今日は難しいこと考えている余裕なんてない。

とりあえずシャワーを浴びてさっさと寝よう。



なんとかシャワーを済ませてベッドに倒れ込むと同時に枕元に置いたスマホがメールの受信を知らせた。

メールか…眠いな…どうしようか。

内容を確認して急ぎの用件でなければ返信は明日にしよう。





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