傷痕~想い出に変わるまで~
情事
週末は土曜日の休日出勤を終えた後、初めて光の部屋にお邪魔した。

あまり広くはない1DKのマンションで、そこに住み始めてからもうすぐ2年になると言っていた。

離婚してからこの部屋に入居するまでは精神的に不安定で体調もあまり良くなかったので実家に居たそうだ。

離婚してから5年も経った今になってまた私たちが付き合っていると知ったら、両親たちはどう思うだろう?

本当の離婚の理由は詳しく話さなかったけれど、私の両親はきっと反対すると思う。

離婚した時には“若気の至りで結婚を早まったから世間と現実の厳しさを知ってうまくいかなかくなったんだな”と散々言われた。

光の両親がなんと言っていたのかは知らない。

結婚生活がうまくいっているうちは時々光の実家に遊びにも行ったし、光の両親にはとても可愛がってもらった。

だけど結果的に離婚してしまったのだから、今となってはもしかしたら可愛い息子を追い詰めてしまった悪い嫁として憎まれているのかも。


光の部屋に行く前に二人で夕飯の材料を買いにスーパーへ行った。

約束していたハンバーグの材料を買って、光の部屋の少し狭いキッチンで料理をした。

久しぶりに作ったハンバーグは少し見た目が不格好だったけれど、光はとても嬉しそうに食べてくれた。

「また瑞希の手料理が食べられるなんて、ホントに夢みたいだな。」

そう言った光の目が心なしか潤んで見えた。


< 176 / 244 >

この作品をシェア

pagetop