傷痕~想い出に変わるまで~
苦し紛れに答えると、光は少し首をかしげた。

「え…?久しぶりって…そんなに?」

しまったな、余計なこと言っちゃったかも。

「この間も少し思ったけど…それでちょっとアレなのかな。よく慣らしたつもりだったけど、もしかして痛かった?」

ちょっとアレってなんだ?

そんな経験豊富な人みたいに…。

なんだか他の人と比べられてるみたいでイヤな気分だ。

最初からものすごくその気だったわけじゃないけど、一気にその気が失せた。

「…その話はもういい。ごめん、今日はちょっと無理みたい。」

「えっ…。」

ごろりと寝返って背を向けると、光は隣に横になって少し困った様子で私を後ろから抱きしめた。

「ごめん…なんか俺、気に障るようなこと言った?それとも瑞希が嫌がるようなことでもしたのかな?」

途中でこんなのひどいと思われるかも知れないけど、私にだってプライドくらいある。

他の人と比べるようなこととか、体があまり良くなかったようなことを言われたら傷付くのは当たり前だ。

あの日バスルームから聞こえた絡み合う男女の恍惚に喘ぐ声をまた思い出して吐き気がした。

両手で顔を覆って不快感に耐える。

「瑞希…?」

「他の人と比べないで。」

「えっ…。」

「光はいろんな人としてきたのかも知れないけど、私は…。」

生娘でもあるまいし、バツイチの私がいい歳してこんな子供じみたことを言うなんて、情けなくて涙が溢れた。

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