傷痕~想い出に変わるまで~
「瑞希、可愛い。大好きだよ。」

まんまとその気にさせられて、いつの間にか体を繋がれて何も考えられないように揺さぶられて。

こうなってしまうと抗う術を知らない私は光のなすがままに体を投げ出して、突き上げてくる衝動に必死で声を抑えた。

ちょっとだけって言ったのに全然ちょっとじゃない。

結局私がその気じゃなくても体だけいいように懐柔して最後までするんだから。

こういうの、ずるい。




事を終えて光は満足そうに私を腕枕して髪を撫でている。

なんだか腑に落ちない。

「瑞希、大好きだよ。」

「……。」

男の人はみんな、してる最中とかその後にそう言うもんなのかな?

好きだからするのか、気持ちいいから好きなのか、体が満足したから好きなのか、よくわからない。

「また機嫌悪い?俺とするのはイヤ?」

「そういうわけじゃないけど…。」

起きていきなりその気もないのに押し倒されたんだから、少しくらいムカついてもいいと思う。

それともそんなことに腹が立つ私がおかしい?

他の女の人はみんなそうされると喜ぶの?

……わからん。

昔はどんな感じだった?

少なくとも私がしたくない時、光は無理にしようとしなかったような気がする。

と、思ったけど。

光に求められて拒んだことなんかないのかも知れない。

あの頃は光に求められると嬉しかったし、お互いに同じ気持ちで求め合っていたんだと思う。

< 184 / 244 >

この作品をシェア

pagetop