傷痕~想い出に変わるまで~
今は…どうだろう?

私がその気じゃなくても光は私の体だけをその気にさせて抱いた。

だけど私の体はあの頃ほど光を求めていない。

抱かれても嬉しいとか大好きだとか昔みたいに感情が昂ったりはしないし、何度も飽きることなく抱き合いたいとは思わない。

体だけはそれなりに反応して快感も得られるけれど、心はどこか冷めている。

昔はこんなことなかったのにな。

私は元々性欲があまり強くないんだっけ?

昔の光は今ほど性的欲求は強くなかったと思うんだけど。

私以外の人と付き合って性的な悦びを知ってしまったのか、単純に年齢とともに性欲が強くなったのか。

もしかして私は仕事に打ち込んで恋愛から遠のいている間に、女として枯れてしまったのか?

仕事のし過ぎで男性化してるとか?

女性ホルモンの分泌が足りてないとか?

まだ32歳なのに、それはそれでまずいだろう。

「瑞希、もう髪は伸ばさないの?」

光が私の髪を撫でながらそう言った。

「短い方が手入れが楽だし。」

「ふーん…ショートもいいんだけど、俺はやっぱり瑞希にはロングの方が似合うと思うな。」

相変わらず髪の長い女の子が好きなのか。

私は離婚した翌日に、光の好みとは真逆になろうとして長かった髪を短くしたんだ。

私の髪が短いのは気に入らないのかな。

「髪はもうこのままでいいよ。気に入ってるし。」

「そっか。まぁどっちでもいいんだけどね。」

「本当は長い方が好みなんでしょ。」

「なんでもいいよ、瑞希なら。」

本当にそう思ってるならもう髪は伸ばさないでおこう。




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