傷痕~想い出に変わるまで~
部長の話が終わって会議室を出た。

門倉は私には目もくれずさっさと一課のオフィスへと戻っていく。

そんなあからさまに無視しなくてもいいじゃないか。

私だって散々悩んだのに。

…なんて、門倉にはそんなこと関係ない。

門倉の気持ちは嬉しかったし、門倉とならうまくいくような気もした。

だけど私は門倉に止められたにもかかわらず一度は別れた光を選んだ。

結果、私は仲のいい同期の門倉を失った。

あっちを立てればこっちが立たず。

なんだかうまく行く気がしない。

何がうまく行かないって…何もかもだ。




みんな忙しい仕事の合間や残業中に少しずつ荷物を整理して、金曜日の夜にはなんとか引っ越しの準備が済んだ。

今週はずっとこんな状態だったから、毎日仕事を家に持ち帰って企画書のチェックをしたり書類の作成をしたりしている。

光と会う時間は取れないままで週末を迎えてしまった。

明日は土曜日、休日出勤をしてもオフィスの引っ越しで何時間かは潰れてしまうだろう。

このままでは日曜日まで出勤する羽目になりそうだ。

それだけはなんとか避けないと。

光は毎日メールを送ってくる。

そのほとんどが会いたいとか、会えなくて寂しいと言った内容だ。

昔付き合っていた時は大学生だったからほぼ毎日会っていたけれど、今はそういうわけにもいかない。

私にはやましいことなんて何ひとつないけれど、また光を不安にさせているのかも。

日曜日だけはなんとかして光と会う時間を作ろう。





< 188 / 244 >

この作品をシェア

pagetop