傷痕~想い出に変わるまで~
土曜の昼にいつも訪れる喫茶店でサンドイッチを食べながら、早川さんの言葉を思い出していた。


“なんでこの人と結婚しようと思ったんだろうって考えるようになって”


最初はおそらく彼のことがとても好きだったから結婚しようと思ったんだと思う。

だけど仕事とか家に嫁ぐという考え方とか相容れない部分があって、お互いに一歩も譲れなかったんだろう。

愛し合って結婚を決めたはずなのに、結婚を具体的に考えたせいでいがみ合って別れてしまうなんて悲しい話だ。


私と光はお互いに好きだったから結婚したものの失敗に終わった。

それなのに私たちはまた一緒にいる。

光は私を好きだと言ってくれるけど、私は?

本当に私は光の気持ちに応えられているだろうか?

会えなくて寂しいとか一緒にいる時くらいはもっとくっついていたいとか、以前の光はほとんど言わなかった。

それが原因で気持ちが離れてしまったから今度は素直に伝えようと思っているのかな。

前みたいに光に寂しい思いをさせないように、私もできるだけ会う時間を作ろうと思う。

サンドイッチを食べ終わり、コーヒーを飲みながら光にメールをした。


【明日は休めるように今日中に仕事片付けるつもりだから、今夜は帰りが遅くなると思う】


すぐに光からの返信があった。


【明日休みなら仕事終わったら俺の部屋においでよ】


これは泊まれと言うことか。

泊まったらまた今夜もゆっくり休ませてはもらえそうにない。

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