傷痕~想い出に変わるまで~
本当は最近少し寝不足で疲れているから、帰ってぐっすり寝たいんだけど。

…仕方ない。

わかった、仕事が終わったら連絡すると返信してスマホを置いた。

コーヒーを飲み終えて少し目を閉じると、急激に眠くなってきた。

ここで寝るわけにはいかない。

うっかり眠ってしまっても、ここに来て起こしてくれる人なんか今はいないんだから。

少し早いけどオフィスに戻ることにしよう。



午後はオフィスの引っ越し準備のせいで滞っていた仕事を片っ端から片付けた。

部下たちから新しい企画の相談を受けながらなので、思うようにはかどらない。

今日は仕事を持ち帰ることはできないから全部済ませて帰りたいんだけど。

かなり遅くなることを覚悟しておいた方が良さそうだ。




部下たちは8時過ぎに全員退社した。

一課のオフィスも人はほとんどいないらしい。

「門倉課長、お先に失礼します。」

「お疲れ様。」

パーテーションの向こうから一課の人と門倉の声が聞こえた。

門倉、まだ残ってるんだ。

なんとなく声がだるそうに聞こえたけど…週末だし疲れているのかも知れない。

それからまた企画書に目を通したり、パソコンに向かって書類の作成をしたりして、なんとか仕事を片付けて時計を見上げると時刻はもう9時半になろうとしていた。

門倉が帰った様子はなかったけど、まだ残ってるのかな?

少し気になって帰り支度をしながらパーテーションの隙間から一課のオフィスを覗いてみると門倉がデスクに突っ伏しているのが見えた。

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