傷痕~想い出に変わるまで~
え?寝てるの?

そっと一課の入り口に近付いて中を見てみると、残っているのは門倉一人だけ。

突っ伏していた門倉が体を起こした。

ノロノロと鞄を手にして椅子から立ち上がろうとしたけれど、足元がふらついてまたドサリと椅子に倒れ込んだ。

なんだか様子がおかしい。

もしかして具合が悪いのかも?

どうしようかと思ったけれど、放っておくわけにもいかない。

もし何かあったら大変だ。

とりあえず大丈夫なのかだけでも確認しないと。

思いきって一課のオフィスに足を踏み入れた。

門倉は椅子に座ったまま手で目元を覆っている。

「…門倉、大丈夫?」

声を掛けると、門倉は何も言わず鞄を手に椅子から立ち上がりゆっくりと歩きだした。

やはりその歩様がおぼつかない。

「ねぇ…大丈夫なの?」

私が目の前まで駆け寄ると門倉は立ち止まって、じっと私を見下ろした。

顔色が悪い。

やっぱり具合が悪いんだ。

車で送ってもらうにも他に誰もいないしどうしようかと思っていると、門倉が突然私の方へと倒れ込んだ。

「えぇっ?!」

支えきれず私も一緒にその場に倒れ込む。

「いたた…って…何これ熱っ!」

私に覆い被さるようにして倒れた門倉の体はビックリするほど熱かった。

「すごい熱…!どうしよう…とにかくなんとかしないと…。」

「…大丈夫だ、ほっとけ。」

門倉は弱々しい声で呟いて起き上がろうとした。

「全然大丈夫じゃないしほっとけるわけないでしょ!」

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