傷痕~想い出に変わるまで~
鍵を開けて部屋に入り、照明のスイッチの場所を聞いて明かりをつけた。

部屋の中は思ったより片付いている。

1LDKの間取りの、男の独り暮らしって感じの部屋だ。

とりあえず門倉をベッドに寝かせた。

「薬とか体温計とかどこにあるの?」

「もういいから…早く帰れよ…。」

「あっそ。じゃあ勝手に探すからいい。」

部屋の中を手当たり次第ゴソゴソ漁っていると、ベッドから大きなため息が聞こえた。

「どこ探しても…ねぇよ…そんなもん…。」

「そうなの?じゃあ買ってくる。近くにまだ開いてるドラッグストアある?」

「いいって…俺もう寝るから…帰れよ…。」

「ふーん…わかった。」

部屋の鍵とバッグを持って玄関を出た。

鍵を閉めてエレベーターで1階に降り、スマホのアプリでこの辺りの地図を見てドラッグストアを探した。

もういいから帰れと言われても看病をしてくれる人なんか他にいないんだから、せめてできることだけでもしておかないと。

マンションから歩いて10分ほどのところにあるドラッグストアで、必要なものをあれこれかごに放り込んだ。

解熱剤と体温計、スポーツドリンク、冷却シート、冷やさないと使えないけど、アイス枕も念のために買っておこう。

門倉の部屋には調理器具とか食材なんてあるのかな?

なんとなく何もなさそうな気がするから、レトルトのお粥とかゼリーなんかも買っておくことにした。

会計を済ませて買い物袋を受け取るとかなりの重量だったけれど、急ぎ足で元来た道を戻った。


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