傷痕~想い出に変わるまで~
「ごめん、冷たかった?」

門倉はうっすらと目を開けて少し驚いているようだ。

「おまえ…帰ったんじゃなかったのか…。」

「ドラッグストアで必要なものいろいろ買ってきた。」

門倉はため息をついて呆れた顔をしている。

「余計なお世話だな…。」

「余計なお世話でけっこう。とりあえず着替えて熱計ろうか。少し起きられる?」

私が手を貸そうとすると門倉はゆっくりと起き上がった。

「いい…。自分でできる…。」

門倉が着替えている間に冷凍庫にアイス枕、冷蔵庫に多めに買ったスポーツドリンクやゼリーなどをしまった。

「着替え終わった?」

「ああ…。」

「じゃあこれで熱計って。」

「オカンか、おまえは…。」

スーツをハンガーに掛けていると測定終了のアラームが鳴った。

「何度?」

体温計を見せられて目を見開いた。

「40.5℃?!40度超えてるじゃない!!」

「俺も初めて見た…。」

見て見ぬふりしてほったらかしにしないで良かった…!

とりあえず薬を飲ませなきゃ。

でも何か食べてからでないと…。

「薬飲む前にお粥とかゼリーくらいなら食べられる?」

「もういい…後は自分でやるから…。」

門倉はさっきからしきりに私を帰らせようとする。

こんな時くらいは頼ってくれてもいいのに。

私が光を選んだから?

門倉とは付き合えないって言ったら、今までの信頼関係も何もかもなかったことになるの?

ずっと一緒に頑張ってきたのに、そんなの寂しい。
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