傷痕~想い出に変わるまで~
午後のオフィスはなんとも言い難い緊迫感に包まれて、パソコンに向かう人たちも電話に出る人もどことなく殺伐としている。

重大な取り引きをモノにできるかどうかの結果が知らされる大事な日だ。

もうじきその返事の電話がかかってくる頃だろう。

この数ヶ月間の努力が報われるのか、水の泡と化してしまうのか。

部下たちは血走った目でパソコンのマウスを握りしめている。


気持ちはわかるんだけどさ。

やるだけのことはやったんだし、ちょっと落ち着こうよ。

今更ジタバタしたところでどうにもならないんだから。

そんな必死な姿はもっと早く見たかったな。

それにしても今日もいい天気だ。

窓から射し込む陽射しをブラインドで遮ってしまうのがもったいないくらい。

今日みたいな日に家で布団を干せたらきっと気持ちがいいんだろう。

ここ最近、休日はいつも天気が悪くて思うように洗濯物が乾かない。

前に布団を干したのはいつだったっけ?

そんなことを考えながら席を立って伸びをした。


< 2 / 244 >

この作品をシェア

pagetop