傷痕~想い出に変わるまで~
光が他の女と浮気している声を聞きながら、高熱のつらさに耐えて自分で自分の世話をした。

目が覚めた時、私のそばには誰もいなくて、光に見捨てられたんだと思った。

あの時の悲しさとかみじめな気持ちが蘇る。

「ごめん、やっぱりほっとけないよ。私はほっとかれてつらかったし、そばにいて欲しかったからさ…。せめて門倉が薬飲んで眠るまでは見届けさせてよ、心配だから。」

「…勝手にしろ。」

ゼリーを食べ終えた門倉に薬と水を渡した。

門倉は素直に薬を飲んで横になった。

「すぐ手が届くところにスポーツドリンク置いとくからね。」

「おー…。」

ベッドサイドにペットボトル入りのスポーツドリンクを置いて離れようとすると、門倉は私の手を掴んだ。

「俺が眠るまで…いるんだろ?」

「ん?うん、いるよ。」

門倉の手が熱い。

その熱が伝わって私の手まで熱くなる。

「だったら…こうさせとけ。」

「それで安心して眠れそう?」

「興奮して…眠れなくなったら…責任とれよ。」

「バカ…。」

手を握られながらベッドのそばに座って、しばらく門倉の様子を見ていた。

門倉はつらそうに息をしながら目を閉じている。

ちゃんと眠れるかな。

早く薬が効くといいんだけど。

目を閉じた門倉の顔を見ていると、私までだんだんまぶたが重くなってきた。

ずっと寝不足で疲れが溜まっているから、気を抜くと眠ってしまいそうだ。

私まで眠ってどうする。

門倉が眠るまでなんとか持ちこたえなくちゃ。



< 200 / 244 >

この作品をシェア

pagetop