傷痕~想い出に変わるまで~
束縛
誰かに手を握られ、優しく頭を撫でられているような気がした。

あったかくて気持ちいい。

あたたかくて柔らかいものが頬に触れた。

ふわふわと浮き足立つような幸せな気分だ。

ずっとこうしていたいな……。



「ん…寒っ…。」

寒さに身震いして目が覚めた。

カーテンからうっすらと日の光が射し込んでいる。

「……あれ…?え、嘘…朝…?!」

門倉が眠ったら部屋を出ようと思っていたのに、ここ最近の疲れのせいであのまま眠ってしまったらしい。

門倉はまだ私の手を握ったまま眠っている。

夕べは荒かった息遣いも少し落ち着いているようだ。

熱も少しは下がったかな。

ところで今何時なんだろう?

キョロキョロ辺りを見回して時計を探す。

壁時計の針は間もなく7時を指そうとしている。

門倉もよく寝てるし、私もまだもう少し寝たいな…。

ポスッと布団に顔をうずめた。

あれ…?何か大事なこと忘れてないか?

えーっと…確か夕べは仕事の後に光と…。

「ああっ!」

思わず声を上げると、門倉がうっすらと目を開いた。

「なんだ…デカイ声出して…。」

「起こしてごめん、あのままうっかり眠っちゃって…どうしよう…。」

門倉は私の手を離してため息をついた。

「だから帰れって言ったのに。」

「仕事終わったら連絡するって言ってたのにもう朝だよ…どうしよう、心配してるかも…。」

なんと言って謝ろうか?

本当のことを言ったら光はまた余計に心配するかも知れない。

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