傷痕~想い出に変わるまで~
ちっとも信用されていないんだと思うと悲しかった。

「私は嘘なんかひとつも言ってないよ!!昨日は慌ててたから連絡できなかったけど、今朝目が覚めてすぐにここに来たの!光に心配かけて悪いことしたと思ったから!」

「罪悪感に耐えられなくなったから謝ろうと思ってここに来たの?それとも一晩待たせてかわいそうなことしたって同情した?」

光は冷たい自嘲の笑みを浮かべていた。

そんな風に思ってたんだ。

「何それ…ひどい…。」

「瑞希の人の好さにつけこんでどうにかしようって思ってたのかな。あの人が瑞希に気があることくらいわかってる。大人の男なんだしホントは瑞希の手なんか借りなくたって大丈夫だったんじゃないのか。」

門倉は本当につらそうだったし一人で歩くこともままならなかったのに。

それに門倉は私を無理やりどうにかしてやろうなんて思ってないし、いつだって私の気持ちを大事にしてくれて、私がいやがるようなことは絶対にしない。

門倉のことまで悪く言われて余計に腹が立った。

ずっと胸にわだかまっていたものが一気に込み上げた。

「なんで信じてくれないの?私は門倉とも誰とも浮気なんかしたことない!浮気したのは光でしょ?!光は目の前で熱出して倒れてる私をほったらかしにして藤乃と出てったんだよ?!あの時私がどんなに悲しくてみじめな気持ちだったかわかる?!」

言ってしまった。

憎み合いたくはないから、きっと光に直接ぶつけることはないと思っていたのに。

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