傷痕~想い出に変わるまで~
あれから半月が過ぎた。

あの日以来、光が私の体を乱暴に扱うことはなくなり、何もかもが今まで以上に優しくなった。

そして昔のように毎日会うようにもなった。

仕事を終えて自宅に戻ると、何時だろうがマンションの前で光が待っている。

一人だと適当に済ませる夕飯も二人分の支度と後片付けをしなくてはならない。

夕飯と入浴を済ませた後で持ち帰った仕事を片付けたくても、光は私を抱いて満足するまで離してくれない。

仕方なく光が眠った後に持ち帰った仕事をして朝方ようやく仮眠のような形で眠る日が増えた。

そして時には朝も求められる。

眠ってまだあまり時間の経たないうちに何度もキスされて体を弄られ、もう少し眠りたいのに無理やり突き上げられて起こされる。

ほとんど毎日まとまった睡眠時間が取れず、ひどい時は一睡もできないまま出勤する日もある。

仕事中は眠るわけにはいかないからなんとか気力で持ちこたえ、昼休みは食事をゼリードリンクなどで数秒で済ませて仮眠を取るか、少しでも持ち帰らなくて済むように仕事を片付ける。

休みの日くらいはゆっくり眠りたいのに、光が隣にいるとそれもままならない。

そんな日が続いてすっかり憔悴しきっている私を部下たちは心配そうに見ている。

本当の理由なんて絶対に言えないから、夜あまりよく眠れなくて睡眠不足だと言葉を濁す。

不眠症か何かと勘違いされているかも知れない。

本当は眠くて眠くて堪らないのに。


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