傷痕~想い出に変わるまで~
私は泣きながら門倉にすべてを話した。

光の私への強すぎる執着と愛情で身動きが取れなくなっている私を、門倉は優しく抱きしめて何度も頭を撫でてくれた。

「バカだな…なんで俺に相談しないんだよ?」

「こんなことホントは誰にも言いたくなかった…。それに光とのことなんて門倉には言えないって…。」

「あの時のことはおまえは何も悪くない。それなのに…つらかったな、篠宮。おまえはよく頑張ったよ。もうじゅうぶんだろ?最初からうまくいくはずなんてなかったんだ。」

「でも…。」


“お願いだからもう俺から離れて行かないでよ…。瑞希がいないと俺は…生きていけない…”


光の弱々しい声が頭の中で何度もくりかえされた。

今だって光は不安に胸を押し潰されそうになりながら私を待っているかも知れない。

涙を浮かべながら暗闇の底に墜ちていく光が頭に浮かんで、また恐怖で身震いがした。

「怖いの…。私が突き放したら光がまた死のうとするんじゃないかって…それがものすごく怖いの…。」

「篠宮…。」

「光が生きててくれるなら私はどんなに無理してもいい…。私のせいで光が死んだら…私は…!」

感情が昂ってまた大粒の涙が溢れた。

門倉は私の涙をハンカチで拭きながら小さくため息をついた。

「篠宮…おまえはそんなんで幸せか?そんなんでホントにあいつが好きだって言えるのか?」

「……。」

何も答えられなかった。

私はホントに光を好きなんだろうか?

この先ずっと光の死に怯えて生きて幸せだろうか?

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