傷痕~想い出に変わるまで~
夕飯が済んだ後、光はまた薬を飲んでベッドに横になった。

よほど具合が悪いのかな。

夕飯の片付けを済ませてそばに行くと、光は私の方に手を伸ばした。

あ、これ…。


“おいで、瑞希”


懐かしいな。

昔、光がよくやっていたんだ。

隣に添い寝すると、光は私の顔を両手ではさんで額や頬、鼻先、そして唇に何度も短いキスをした。

「俺、今めちゃくちゃ幸せ。瑞希がすぐそばにいて笑ってくれて…。瑞希、大好きだよ。」

「ん…?急にどうしたの?」

「もう会えないと思ってたのにまた会えて…。ひと目だけでも会いたいって思ってたはずなのに、実際に会ったら笑って欲しいとかまた一緒にいたいとか、どんどん欲が出てきてさ…。また付き合ってくれるとは思ってなかったから、また欲が出て瑞希を縛り付けちゃった。ごめんな。」

急に改まって何を言い出すんだろう?

どう言い表していいのかはわからないけど、明らかに何かがおかしい。

「光、急にそんな改まっておかしいよ。どうしたの?」

言い様もない不安が込み上げた。

光は私の唇にそっと口付けて、優しく髪を撫でた。

「瑞希、今までごめんな。もう一度夢を見せてくれてありがとう。」

「え…?」

「別れよっか、俺たち。」







< 222 / 244 >

この作品をシェア

pagetop