傷痕~想い出に変わるまで~
門倉の言葉に思わず吹き出した。

私の手から枝豆がコロコロと転げ落ちる。

「私の禊に付き合うためにわざわざ神戸から戻ってくるの?」

「……悪いか。」

門倉はそっぽを向いてばつの悪そうな顔をしている。

ホントに優しいな、門倉は。

光が亡くなったことで私がまた前に進めなくなるとか、自分がいないと私が寂しい気持ちとかつらいことを吐き出せないと思ってるんだ。

光は半年でいいって言ったけど、私が次の恋に進むにはもう少し時間が必要だと思う。

門倉のことは大事だし好きだと思うからこそ、気持ちに応えられないままなんのあてもなく待たせるわけにはいかない。

「悪くないけど…門倉の禊は済んだんだから気を遣わなくていいよ。遠慮なく幸せになんなさい。」

「ホントにムカつくな、おまえは。だったら遠慮なんかしねぇ。破産するほど戻ってきて口説き落としてやる。」

なんだかすごい宣戦布告を受けてしまった。

こういうところは門倉らしい。

「ふーん。でも私の禊が終わるの待ってたら門倉はおじいちゃんになっちゃうんじゃない?」

「確かにな。新卒の新入社員が今では立派な課長だよ。」

ん…?なんのこと?

門倉も私も大学を卒業してすぐに入社して今では課長だけど、それがどうかしたのかな?

「どういうこと?」

「この際だから教えてやる。俺は新入社員の時からおまえが好きなんだよ。」

「えっ?」

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