傷痕~想い出に変わるまで~
結実
月日は流れて季節は巡り、光が亡くなってから2度目の夏が終わろうとしている。

あの時32歳だった私は34歳になり、短かった髪は腰の少し上辺りまで伸びた。

相変わらず企画二課の課長として仕事に打ち込む毎日だ。

今年の春、早川さんと田村くんが結婚した。

早川さんは二課の主任に、田村くんは一課の課長に昇進してますます仕事に励んでいる。

そんな早川さんが来年の早春にお母さんになる。

出産後も仕事を続けるそうだ。


この2年間で門倉と会ったのは3回だけ。

破産するほど戻ってきて口説き落としてやるなんて言っていたけれど、年末年始や夏期休暇でなければこちらに来る暇もないほど今の職場は忙しいらしい。

この夏の休暇はこちらに来る都合がつかなかったそうで会わなかった。

転勤したばかりの頃は頻繁に届いていたメールも、最近ではあまり来なくなった。

ここ数ヶ月は電話もない。

2年も経てば心変わりしても仕方ない。

誰かいい人でも見つかったのかな。

私は自宅と職場の往復をするだけの毎日。

仕事が終わって夜遅く帰宅した後、リビングのソファーに座って缶ビールを飲む。

話す相手のいない一人の禊は寂しいものだ。

ビールを飲みながら光のことや門倉のことを考える。

テーブルの上には光の3回忌の案内状。

早いな。

あれからもう2年なんだ。

今でも最後に会った日の光のことを鮮明に思い出す。

私の中で光はいつも、優しい目をして笑っている。


< 234 / 244 >

この作品をシェア

pagetop