傷痕~想い出に変わるまで~
翌週土曜日。

なんとか仕事の都合をつけて光の3回忌に出席した。

大学時代の友人の姿もチラホラ見える。

この2年間、私は光のお墓を何度となく訪れた。

少し寂しくなった時に光のお墓の前で手をあわせると、頬を両手で優しく包まれるような不思議な感覚を覚えた。

もしかしたら光がいるのかな、なんてことを考えて思わず笑みがもれた。

今日も光はどこかで私たちを見守っているんだろうか。

手をあわせて心の中で光に話し掛ける。


光、あれからもう2年も経ったんだね。

私は相変わらず仕事ばっかりだけど…強いて言えば髪が伸びたかな。

忙しくてなかなか髪を切りにいけないうちに伸びちゃったから、ついでに伸ばしてみたんだけど。

瑞希にはショートよりロングの方が似合うって光は言ってたけど、今もちゃんと似合ってる?

約束は半年だけだったけど、私は今日までずっと光だけの瑞希だったよ。

光が生きているうちにもっと優しくできたら良かったな。

光はあんなに私を愛してくれたのに、私は光にその半分も返せなかったかも知れない。

ごめんね。

だけど本当に大好きだった。

優しい光が大好きだったよ。

光のことはずっと忘れない。

忘れないけど。

私もそろそろ、次の一歩を踏み出してみてもいいかな?

とは言っても最近連絡もないし、向こうはもう私のことなんてなんとも思ってないかも知れないんだけど…。

今更もう遅いって言われるかもね。

あんまり自信はないけど、次に会えたら勇気を出して素直に気持ちを伝えてみようかな。

門倉ならきっと、私と一緒に光をずっと覚えていてくれるはずだから。


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