傷痕~想い出に変わるまで~
「みんなさぁ…ちょっと落ち着こうよ。今更必死になったって何も変わらないよ?」

上司の私がこんな性格だから部下たちは不安なのかも。

そう思わなくはないけれど、ホントのことを言ったまでだ。

みんなが不安そうな表情を浮かべながら私を見ている。

あと数分もすればおのずと結果は表れる。

果報は寝て待てなんて諺、みんな知らないのかな?

「篠宮課長は緊張とかしないんですか?」

「んー…しないねぇ。それより今はコーヒー飲みたい。ついでに言うとタバコも吸いたいね。」

小銭とタバコを持ってオフィスを出ようとすると、電話のベルが鳴った。

素早く受話器を上げて応対した金城くんが突然立ち上がった姿を視界の端にとらえた。

「ありがとうございます!!はい、精一杯務めさせていただきます!!」

電話の相手に見えるわけでもないのに、金城くんは腰を直角に折り曲げる勢いでお辞儀をした。

何度見てもおかしな光景だ。

「ほら、結果は出たじゃない。」

深々と頭を下げながら電話を切った金城くんを、みんなが取り囲んだ。

結果はわかっているのにハッキリとした言葉で聞きたいんだろう。

「やりましたよ!!オリオン社の“みなとまち花と光のプロムナード”のプロデュースは我が社に決定です!」

「おおっ!!やったな!!」

「頑張った甲斐がありましたね!」

私は部下たちの歓喜の声を背に、口元に笑みを浮かべながらオフィスを出た。


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