傷痕~想い出に変わるまで~
「たいした自信ですこと。」

「まぁな。俺が篠宮を一番近くで見てたってことは、俺を一番近くで見てたのも篠宮ってことだ。」

確かにそうだけど…そんなこと言われると丸裸にされたみたいで恥ずかしいわ!!

それに今、“門倉を一番知ってるのも私”みたいなことをさらっと言ったよね?

いやいや…そんな風に言えるほどは知らないよ、門倉のことなんて。

しれっとした顔でそんな恥ずかしいことが言えるってことは、門倉ってやっぱり天然タラシなのかも知れない。

「それはともかく。篠宮のこんな話聞いてやれんの、俺しかいないだろ?」

「なんかムカつくんだけど…。」

「いいからほら、話してみ。」

ちょっとムカつくけど、私は光が付き合っていた女の人の話や、光に言われたことと私が言ったことを事細かに話した。

光があの人と付き合い始めた経緯や、浮気のつもりが本気になってしまったことと別れに至った理由。

お互いに向き合おうとしなかったことや相手に寄り添う気持ちを持てなかったことを、光も私と同じようにずっと後悔していたこと。


“ずっと一緒にいようって約束したのに、俺は…!”


光のその言葉の先は聞くのが怖くて逃げてしまったと言うと、門倉は顎に手を当てて何かを考えるそぶりを見せて、ライターの蓋をカチャカチャと開け閉めし始めた。

しばらく黙ってその金属音を聞いていたけれど門倉は何も言わないし、だんだんそれが耳障りになってイラッとした。




そして今に至る。




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