傷痕~想い出に変わるまで~
門倉が突然立ち止まって私の腕を掴んだ。

私が驚いて立ち止まり見上げると、門倉は真剣な顔をして私をじっと見た。

「あのさ、篠宮。ひとつ約束して欲しいんだ。」

「なに?」

なんだなんだ?

急に改まって気持ち悪い。

「禊が終わるまでのこと、俺には隠さず話してくれるか。」

「なんで?」

「なんでって…気になるからだろ。」

乗り掛かった舟ってやつか?

お人好しだから他人のことまで心配でしょうがないとか?

「ふーん…よくわからないけどわかった。」

心配してくれているのはよくわかるから素直にうなずくと、門倉は私の手を離して少し目をそらした。

「それで全部終わったら…。」

突然門倉が口ごもった。

そんなに言いにくいこと?

さては何か催促しようとしてるな。

「終わったら…打ち上げでもする?散々付き合ってもらったしお礼におごるよ、パーッとね。」

広い背中をバシッと叩くと、門倉はまた残念そうにため息をついた。

「あれ?違った?」

「…もういいや。それじゃ高い店で焼肉おごれ。」

焼肉なんて一人ではなかなか行かないし、門倉となら気兼ねなくお腹いっぱい食べて飲んで楽しめそうだ。

「いいね、行こう!ビールで乾杯して美味しい焼肉!!」

「約束だからな。俺に早くうまい肉を食わせろ。」

「わかったわかった。」

禊が終わったら普通に乾杯もできるし、過去を振り返って後悔とか反省するんじゃなくて、二人とも笑って楽しいお酒が飲めるのかも。

「新しい恋はそれからだね。」

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