傷痕~想い出に変わるまで~
そんな時、気晴らしに酒でも飲もうと岡見と小塚がサークルの同期生を数人集めて飲み会を開いた。

「思えばあれがシノと光の離婚を早めたのかもな。」

岡見が言うには、その飲み会でサークルでも特に仲の良かった藤乃(フジノ)と再会したことがきっかけで、光は私とのことを彼女に相談するようになったらしい。

藤乃は私にとってもサークルで特に仲の良かった友人だ。

偶然にも勤め先が近かったこともあって仕事の後で頻繁に会うようになり、男女の仲になるのに時間はかからなかったと言う。

「サークルで仲良くしてたしシノは知らなかったかも知れないけどな、藤乃はシノたちが付き合うより前から光のことが好きだったんだ。光はシノのことが好きだったから藤乃に付き合ってくれって言われても断ったらしいけどな。」

まったく知らなかった。

藤乃は光のことが好きだなんて一言も言わなかったから。

「シノは光が藤乃を家に連れ込んでるところに鉢合わせたんだろ?」

「いや…そうなんだけど…相手が藤乃だったってことは今初めて知った。私は直接姿を見てないから。」

あの日のことを話すと、岡見と小塚は顔を見合わせた。

「シノ、熱出して寝てたのか?」

「寝てたっていうか、意識を失ってた。」

「それでか…。光はシノが夫の浮気を気にも留めないで寝てたって思ってる。日頃の激務の疲れで早く帰ってきて寝てたんだろうって。」

「えぇっ…。」


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