傷痕~想い出に変わるまで~
後悔
翌日の昼休み。
会社の中庭のベンチで花壇の花を眺めながらコーヒーを飲んで、ぼんやりして過ごした。
昨日岡見と小塚から聞いた話が頭の中をぐるぐる駆け巡る。
光と会ったら何から話せばいいのか。
岡見と小塚から聞いたと言うわけにはいかないから、何も知らないふりをしていた方がいいのかな。
やっぱりもう会わない方が…とも思うけれど、光は連絡を待っているだろうし、そういうわけにもいかないだろう。
今朝からポケットの中には光の名刺が入っている。
だけどいざ電話しようとすると指が震えて、思いきることができない。
昔はなんのためらいもなく電話をして、夜遅くまで他愛ないことを話し込んだっけ。
優しく耳に響く光の声が好きだった。
電話を切る前の“おやすみ瑞希、大好きだよ”の一言が、いつも私を幸せな気持ちで眠りに就かせてくれた。
結婚したらよほどの用がないと電話をしなくなったけれど、その分いつもすぐ隣に光の温もりを感じながら優しい声を聞いていた。
体温とか鼓動とか息遣いをすぐそばに感じて安心していたのは私だけじゃない。
きっと光も同じだったんだと思う。
だけどそんな大事なことを忘れ、その温もりを手放してしまったのは私の方だった。
腕時計を見てため息をついた。
スマホと名刺をまたポケットの中にしまい、仕事が終わったら電話しようと思いながらオフィスに戻った。
電話することさえためらってしまうほど、今の私たちの間には大きな距離がある。
本当に今更気付いても遅いことばかりだ。
会社の中庭のベンチで花壇の花を眺めながらコーヒーを飲んで、ぼんやりして過ごした。
昨日岡見と小塚から聞いた話が頭の中をぐるぐる駆け巡る。
光と会ったら何から話せばいいのか。
岡見と小塚から聞いたと言うわけにはいかないから、何も知らないふりをしていた方がいいのかな。
やっぱりもう会わない方が…とも思うけれど、光は連絡を待っているだろうし、そういうわけにもいかないだろう。
今朝からポケットの中には光の名刺が入っている。
だけどいざ電話しようとすると指が震えて、思いきることができない。
昔はなんのためらいもなく電話をして、夜遅くまで他愛ないことを話し込んだっけ。
優しく耳に響く光の声が好きだった。
電話を切る前の“おやすみ瑞希、大好きだよ”の一言が、いつも私を幸せな気持ちで眠りに就かせてくれた。
結婚したらよほどの用がないと電話をしなくなったけれど、その分いつもすぐ隣に光の温もりを感じながら優しい声を聞いていた。
体温とか鼓動とか息遣いをすぐそばに感じて安心していたのは私だけじゃない。
きっと光も同じだったんだと思う。
だけどそんな大事なことを忘れ、その温もりを手放してしまったのは私の方だった。
腕時計を見てため息をついた。
スマホと名刺をまたポケットの中にしまい、仕事が終わったら電話しようと思いながらオフィスに戻った。
電話することさえためらってしまうほど、今の私たちの間には大きな距離がある。
本当に今更気付いても遅いことばかりだ。