俺にだけは、素直になれよ。~幼なじみとヒミツの同居~
無邪気なアイツと、素直じゃない私。【美月side】

文化祭も無事に終わり、気付けば今日からもう10月。


爽やかな風を感じながら自転車を走らせていると、風に乗って運ばれてくるのは、キンモクセイの甘い香り。


──スンスン。


この香りを堪能したくて、思いっきり鼻から息を吸い込む。


……いい香り。


私は、どんな香水よりも、このキンモクセイの香りが一番好きだ。


同時に、切ない記憶がよみがえる。



「いつかまた、絶対に美月に会いにくるから!」



思い出はまたひとつ遠くなっても、その言葉だけはずっと鮮明に残っていて。


今頃、どうしてるかな……アイツ。


どんな高校生してるんだろ。


一目だけでいいから。


会ってみたいな。


アイツのことを思いながら見上げた空は、綺麗な水色をしていた──。

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