俺にだけは、素直になれよ。~幼なじみとヒミツの同居~



でも、大地はたったさっきまで女の子たちに囲み取材を受けてたはずじゃ……。


なんてことを思いながら大地を見ると。


大地は、私の隣の田口くんの席に座りながら、私の右耳のイヤホンを勝手に自分の左耳につけていて。



「美月、元気してた?」



なんて、横目で私を見つめながら、にこやかに聞いてくる。


う、うわ。


さすが、おじさんもおばさんも美形なだけある。


悔しいけど、認めたくないけど、


この学校で、大地が一番カッコイイかもしれない……。



「……べ、べつにフツーだよ」



目を合わせるのが恥ずかしくて、そっけなくそう言うと手元の小説に目をやる私。



「じゃあ、俺に会いたかった?」


「……っ!?」



ニコニコしちゃって。


よくそんなこと聞けるね。



「自惚れないで」



私は冷たく言い放った。


自分でも呆れるくらい可愛くないって思う。


ほんとは……、


ほんとは、ずっと大地がいつか会いに来てくれるんじゃないかって、心の中で待ってたくせに。


期待してたくせに……。


それでも、やっぱり私は素直にはなれなくて。



「大地のことなんて、忘れてたし」



思ってもいないことを口走ってしまっていた……。



「は?それ、マジで言ってんの?だとしたら、俺すげーショックなんだけど」



大地からはさっきまでの笑顔が消えていた。


私は耐えきれずにフイッと顔を背けると、その拍子に左耳のイヤホンがはずれてしまった。


だから。



「なんだよ、ずっと会いたいと思ってたのは俺だけだったってことかよ」


「……っ」



大地の声が、やけに大きく聞こえたような気がした。










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