俺にだけは、素直になれよ。~幼なじみとヒミツの同居~
──3限目の体育の時間。
今日は、体力テストで、今はグラウンドで50メートル走のタイムを計っているところだった。
「キャーッ!向日くん、足速~いっ!」
綺麗なフォームで風のように駆け抜けていく大地に、女子たちは釘付けになっていて。
「アイツ、今のタイム6,50秒だったってよ」
「マジかよ、超速いじゃん!俺と同じ陸上部に入ってくんねーかな。あとでスカウトしちゃお!」
今の走りを見た男子たちからも、さっそく一目置かれているようだった。
大地、昔から運動神経はいいからね。
「大地くん、イケメンで俊足とかマジヤバ~い!」
近くで愛美が友達と騒いでいる。
さっそく、“大地くん”なんて下の名前で呼んでるし。
私には関係ないけど。
「続いて、女子。出席番号順に計るから早く並べ~!」
体育の先生の掛け声に、しかたなく立ち上がる。
すると。
「美月には負けないよ?」
すれ違い様に吐かれたセリフに顔をあげれば、愛美がニヤリと笑っていた。
だから、いちいち、そういうのいらない。
私のタイムを抜きたければ抜けばいいだけのこと。
勝手に張り合ってればいいんだ。