俺にだけは、素直になれよ。~幼なじみとヒミツの同居~
顔は笑ってるけど、その垂れた二重の目には悔しさを滲ませた愛美がいた。
「あ、いきなり二人の会話に入っちゃってごめんね!あたし、黒橋愛美っていいます。美月とは中学から一緒なの。大地くんは美月と幼なじみなんだよね?これからよろしくね♪」
大地を上目遣いで見つめながら、最後にニコッと笑って自己紹介する愛美。
「そうなんだ。こちらこそ、ヨロシクな」
大地も笑ってこたえている。
「美月、もったいないよぉ~。そんなに速いんだから、高校でも陸上続ければよかったのに~」
そんなこと微塵にも思ってないくせに、よく言えるよね。
そもそも、中学のとき、私に陸上をやめさせようとしたのは愛美でしょ?
そのときのことを思い出すだけで気分が悪くなる。
「へぇ~!美月って、中学では陸上やってたんだ?」
だけど、愛美の本性を知るはずもない大地はにこやかに会話してる。
「そうなの!美月は大会で優勝したことがあるくらいすごかったんだから。ねっ?美月っ♪」
なんで愛美が答えてるの。
大地の前だからって、友達ぶらないで。
私のことを知ってるフリなんかしないでよ。
「それより、大地くんこそめちゃくちゃ足速いよね?よかったら陸上部に入らない?」