俺にだけは、素直になれよ。~幼なじみとヒミツの同居~



「なによ、そんな大きな声出さなくたっていいじゃない」



愛美は、周りから浴びる視線に焦っているみたいだった。


ただえさえ、シオンとの一件以来、みんなの愛美に対する見方は完全に変わってしまっていたから。


それは、愛美が一番よくわかっているはず。



「なんか、めずらしく土屋さんが怒ってない?」


「また愛美がなんかやらかしたんじゃないの?」


「愛美、まだ懲りてないのかな」


「性格の悪さは、そんなすぐに治るものじゃないでしょ」



愛美の陰口を叩く、クラスの女子の会話が嫌でも耳に入ってくる。


愛美にだって聞こえてるはずで。



「ふん、わかってますよ~だ。菜乃ちゃん誘うからい~もん!」



そう言い捨てると、愛美はさっそく菜乃花のところへと行ってしまった。


菜乃花なら、ひとりぼっちの愛美に誘われたら、きっと断ることなんてしないよね。


菜乃花も、ひとりぼっちの辛さを知っているから……。


それがわかっているから、愛美だって菜乃花に声をかけるんだよね。


私が愛美を拒絶することによって、菜乃花に迷惑かけることになってしまうんだ……。



「……」



菜乃花に愛美を押し付けることはしたくない。


だからって、愛美に私と大地の間に割って入ってこられるのは、どうしても嫌……。


ならいっそのこと、みんなで回るべきなのかな……。
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