俺にだけは、素直になれよ。~幼なじみとヒミツの同居~
そういえば、前に愛美ちゃんが、あの子の好きな人はタケルだって言ってたもんな。
「シオンちゃんには、愛美ちゃんとの一件で、すげー悪いことしちゃったし、その罪滅ぼしってわけじゃねーけど、誘われて断れなかったっていうかさ、」
タケルは頭をかいて苦笑いを浮かべている。
「けど、ほら、シオンちゃんて可愛いし?意外とタイプだったりするんだよなぁ~♪」
なんだよ、罪滅ぼしとかいいながら、シオンちゃんのこと恋愛対象としてちゃんと意識してんじゃん。
あんなことがあったし、シオンちゃんが報われるといいけど。
けど、まてよ?
「愛美ちゃんは、誰と回るか聞いてる?」
「あー、俺も心配になって聞いたら、5組の狩野と回ることにしたって言ってたよ?」
タケルの口から出た、“狩野”という男の名前。
「誰、それ?」
けど、名前を聞いても全然わかんねー。
「俺と愛美ちゃんと同じ陸上部。イケメンで女子からもモテんのにずっと彼女いなくて。それは、狩野が愛美ちゃんに片思いしてるからなんじゃないかって、前から部員たちの間では噂されてんだよね~」
……そうなんだ。
「狩野は、あの一件のあとも、“愛美ちゃんがそんなことするはずない”って、信じたがってたしなぁ。よっぽど惚れてんだな、アイツ」
何はともあれ、明日、愛美ちゃんにも回る相手がいんならよかったよ。
そんな話をしていたら、部屋のドアがノックされた。