俺にだけは、素直になれよ。~幼なじみとヒミツの同居~
「どうせ、女ならみんな“可愛い”って言えば喜ぶとでも思ってるんでしょ」
美月は、フイッと顔をそむける。
「そんなこと思ってねぇし。俺は、思ったことを口にしちゃう性格なだけ」
「……」
あれ?美月が黙り込んだ。
「……ねぇ。大地は、なんで私だってすぐに気づいたの?」
まだ頬を赤く染めたままの美月が、うつむき加減のまま、その大きな目だけを上に向けて俺を見て言った。
その表情に、俺の胸がキュンと締め付けられる。
「事前に親から聞いてたから。美月がこの学校に通ってるってこと」
「え?」
「だから、転校するなら、美月がいるこの学校にするって決めてた」
「……」
美月は驚いているのか、固まっていた。
「それで、教室の外で待ってたとき、先生が“土屋さん”って呼んでるのを聞いて、まさかとは思ったんだけど、教室に入ると、おばさんに瓜二つの美月を見つけた瞬間、絶対そうだ!って確信したんだよね」
「……っ」
「クラスも一緒になれるとか、これは、相当縁がある証拠だよな」
「……縁は縁でも、腐れ縁ってヤツでしょ」
「いいよ、それでも」
「……え?」
「どんな縁だろうと、今こうして美月に会えてんなら、なんだっていいんだよ」
ようやく10年の時を越えて再会を果たすことができたんだ。
たとえ、美月が俺のことを忘れてたとしても。
俺は、一度だって美月を忘れた日なんかなかった。
それは、美月は俺の、初恋の人だから……──。