俺にだけは、素直になれよ。~幼なじみとヒミツの同居~
「バレないための努力をしろって言ったのは、どこの誰だっけ?」
「……っ」
……はい。それ言ったの、私です。
「ったく、こっちは慣れないウソついて心臓バクバクだっつの。ほら、触ってみ?」
そう言うと。
大地は、私の右手を取ると、大地の左胸あたりに押し付けてきて。
「……っ!」
手のひらに伝わる、大地の鼓動。
……ほんとだ。
すごい速さで動いてる。
「な?」
私の顔を見下ろし、大地は眉尻をたらしてふっと笑った。
「……ゴメンね?大地にウソ吐かせて」
私とは違って、まっすぐで素直な大地にウソをつかせてしまったことにものすごく罪悪感を感じるよ……。
すると、大地は私の髪をくしゃりと撫でて。
「いいんだよ、そんなこと気にすんなって。たしかにウソは嫌いだけど、美月を守るために必要なウソなら、俺はいくらだって吐けるから」
「……っ」
あぁ、どうしよう……。
そう言って微笑む優しい笑顔に、胸が苦しいくらいにキュンと締め付けられる。
──“ありがとう”。
照れ臭くて素直に言葉にできない代わりに、今夜はやっぱり、チキンじゃなくて、ビーフカレーにしよう。