サッカーばか
「60年前の戦争。私はまだ16才だったわ……」
* * * * * * * * *
「ゆき~!!!」
そう呼ばれた私は、嬉しくなってふりむいた。
私の事を'ゆき'なんて呼ぶ人は1人しかいない。
私の名前を呼んだ彼の名は、
「けんっ!」
私の大切な…………まだ、幼なじみ。
日本で、戦争が始まっていたのは知っていたけど、
まだ、自分達と関係のない話だと思っていた。
「今日は何の日か知ってる?」
そう、私が訪ねると……
「っえ……」
と黙ってしまう彼。
不器用で、でも、すごく優しかった。
知らなくてあたりまえだったんだけど、
「えー、知らないんだ。」
と少しすねてしまう。
「ご、ごめんって!何?もう忘れないから」
本気で焦っている彼をみると、すぐ許しちゃう私の悪い癖。
「……ゆきって呼んだ日。」
そう、聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で言うと、彼は案の定、首を傾けた。