幾年の愛を
最初から伏見冬吏は分かっていたんだ。
だから私を自分の目の届くところに
おいておいたんだろう…
時間がたつにつれ消えていった黒い塊が
なくなるり、私は自分の方に手を戻した。
「これでいい…後は寝ていればそのうち
目も覚ます……
千星帰ろうか…外で待ってる2人にも
申し訳ないし」
「はい…」
「采羽」
私が立ち上がると同時に入ってきたのは
クロだった。
「正直、会いたくなかったな…クロ」
「っ…また行くのか?」
「行かなきゃならない…これからのためにも…
ここのためにも…」
横を通りすぎると、私の頬には何か暖かいものが
あたった。
「クロ?」
後ろを振り向くと、涙を流しているクロが
目に入った。
その光景が、どうしてか目に焼き付いて離れない…
そうか…みたことがあるからか…
私の知らない…私の記憶…
「采羽様」
「わかってる…」
もう振り返ったりしない…
こんな気持ちになるくらいなら…
ー天界ー
部屋に戻ってきても私の頭の中を過ぎるのは
さっきのクロの涙だった。
「チッ」
どうして私がこんな…