幾年の愛を
「さすがは神の子だ」
神の子?こいつは何を言ってるんだ…
「お前には力があるんだろ?」
力…人の気持ち、過去、その人の
全てが私には見えていた…
どれだけ、拒んだとしてもそれは
勝手に私の中に入ってくる。
そして、傷を治す力…あれは
その人の傷を癒す代わりに自分が
その痛みを味あう。
それが私にとっての普通だった。
「お前は異人なんだよ、そうだ。
特別について教えてやるよ。てめぇの力が
あれば神にだって王にだってなれる!
王はただの王じゃねぇ…魔界の王だ」
神?魔王?そんなの私には関係ない…
私はそんなことが聞きたくて
ここに来たんじゃない!
「子供達をかえして!」
「ハハハハハハッ!その顔が見たかった神の子!」
クルッたように笑いながら私を
見下している水嶋さん…うぅん
あれは水嶋さんじゃない…なら、本当の
水嶋さんはどこなの?
「お前が死ねば誰も苦しまない」
私が死ねば…誰も苦しまない?
そうか…考えればわかる事じゃん…
誰のせいで子供達がここにいるの?
誰のせいで水嶋さんは変になったの?
誰のせいで…人を傷つけてるの?
全部全部…私がいるからこんな事になってる…
私が死ねば…もう誰も…苦しまない…
(必ず生きろ)
兄さん…もういやだよ…
独りで頑張るなんて…私には無理だ。
前をむくとガラスの破片が私に向かってきていた。
本来ならよけるのなんて簡単だ。
でも、今は…そんな気力さえない…
もう駄目だな、と思い目をつむると
あの人の声が聞こえた。