幾年の愛を


車に乗り込もうとしたとき
誰かに呼び止められ、私は後ろを振り返った。

そこには水嶋さんの姿があり、
息を整えていた。


「その…私…謝りたくて…ご、ごめ…」

「別にいいよ…もう」

「え?」


水嶋さんの言葉を遮り、私は離れているところから水嶋さんと
向き直る。

確かにこの人にはひどいことをたくさん
されたかもしれない…
でもそれは、この人がやりたくて
やった事じゃないんだ…だから、
私はこの人を責めたりはしない。


「私ね…あの時…水嶋さんが声をかけてくれて…嬉しかったよ…さようなら」

私はここにはもどらないから…
もう会うことはないけど…
あの時のことは…絶対に忘れないよ…


  あの時声をかけてくれありがとう…
      
     …希胡…





『ねぇ…私、水嶋希胡!あなたは?』

『刻代采羽…』

『采羽ね、これから仲良くしよう!』






あの日のあなたの笑顔を…
私は忘れないから…











 
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