幾年の愛を
ヴァルプルギスの夜

~夢~


『気持ち悪ぃ…なんでこんな餓鬼なんざ
生んだんだあの女はよ!』

     パキン!


また…またあの男が暴れてる。
怖い…また殴られる。
また痛い思いをする。ここから逃げたいよ

誰か助けて…


《采羽、必ず助けは来てくれるよ?
だから大丈夫だ》


私の大好きなたった1人の兄。
なのに…あいつは…


『アッハハハハハハーッ!ダッセェー!
子供は逆らったからこうなるんだよ!』


冷たくなった兄をずっと蹴る男が
憎くて憎くて…私は傍に落ちていた
フォークを男の足に刺した。


『ぎゃあーーっ!こっの!糞餓鬼が!』


殺されると思っていたとき、ずっと
開かなかった玄関のドアが開いた。

駄目だ。見たくないのに…
ここからは見たくないのに…


イヤでも聞こえてくるあいつらの声。


<こんなことばっかやってられるかよ>

<また餓鬼が死んでる…めんどくせぇ>


やめて…何も言わないで…


<さぁおいで?外にでよう>


触るな!私に触るな!
誰も信じない!誰も…私に近づくな!


《大丈夫…必ずまた会える》

え?

《トワ…俺はお前を1人にはしない
ずっと傍いる》


そこで私の夢は途切れた。


 
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